「化学物質のリスクアセスメントをしてください」
そう言われても、初めて担当する人は困ってしまうでしょう。
「そもそも、何を調べるの?」
「洗浄剤や接着剤も関係あるの?」
そんな疑問を持つ人も多いと思います。
2026年4月、リスクアセスメントが必要な化学物質は、約2,900物質まで増えました。
化学工場だけの話ではありません。
仕事で洗浄剤、塗料、接着剤、シンナーなどを使っている会社も、関係する可能性があります。
この記事では、会社が何をすればよいのかを、できるだけやさしく説明します。
リスクアセスメントとは?
リスクアセスメントとは、仕事の中にある危険を探し、事故を防ぐ方法を考えることです。
簡単にいえば、作業を始める前の「危険探し」です。
例えば、洗浄剤で部品の汚れを落とす作業を考えてみましょう。
洗浄剤には、次のような危険があるかもしれません。
- 目に入ると、目を傷める
- 手に付くと、かぶれる
- 蒸気を吸うと、気分が悪くなる
- 火の近くで使うと、燃える
ただし、同じ洗浄剤でも、使い方によって危険の大きさは変わります。
少しだけ使う場合と、たくさん使う場合では、危険の大きさが違います。
窓を開けて使う場合と、閉め切った部屋で使う場合でも違います。
そこで、次のようなことを確認します。
- どんな危険があるのか
- どのくらい使っているのか
- どのように使っているのか
- どうすれば事故を防げるのか
化学物質の危険を調べ、事故を防ぐ方法を決めることが、化学物質のリスクアセスメントです。
法改正で何が変わったの?
対象となる化学物質が増えた
リスクアセスメントが必要な化学物質は、少しずつ増えてきました。
2026年4月には、対象となる化学物質が約2,900物質まで増えています。
そのため、以前は対象ではなかった製品も、今は確認が必要になっているかもしれません。
厚生労働省「ケミガイド」
「うちは薬品を作っていないから大丈夫」とは限りません。
例えば、次のような製品にも化学物質が使われています。
- 部品を洗うクリーナー
- 製品を組み立てる接着剤
- 色を塗るための塗料
- 床や機械を掃除する洗剤
- 検査や実験に使う薬品
まずは、自分の会社で何を使っているのか確認する必要があります。
会社が危険を調べる
同じ薬品でも、会社によって使い方は違います。
布に少し付けて使う会社もあれば、大きな容器に入れて部品を洗う会社もあります。
使う量や場所が違えば、必要な対策も変わります。
そこで、会社が自分たちの作業を調べ、その作業に合った対策を考えることが大切になりました。
これを「自律的な管理」といいます。
難しい言葉ですが、「自分たちの職場は、自分たちで確認して安全にする」という意味です。
SDSとは?
化学製品の危険を調べるときは、SDSを確認します。
SDSとは、化学製品の安全な使い方が書かれた説明書です。
薬の箱に入っている説明書の、化学製品版だと考えると分かりやすいでしょう。
SDSには、次のようなことが書かれています。
- 何が入っているのか
- 燃えやすいか
- 体にどんな影響があるのか
- どんな手袋やマスクが必要か
- こぼしたときはどうするのか
商品名を見ただけでは、中に何が入っているのか分かりません。
そのため、最新のSDSを集めて確認する必要があります。
危険が見つかったらどうするの?
リスクアセスメントは、書類を作って終わりではありません。
危険が見つかったら、事故を防ぐための対策を行います。
例えば、洗浄剤の蒸気を吸ってしまう危険がある場合は、次のような方法があります。
- 危険の少ない洗浄剤に変える
- 一度に使う量を減らす
- 容器にふたをする
- 換気設備を使う
- 手袋やマスクを使う
まずは、危険の原因そのものを減らすことが大切です。
それでも危険が残る場合は、手袋や保護メガネなどで体を守ります。
担当者は何から始める?
初めて担当する場合は、次の順番で進めると分かりやすいでしょう。
1.職場にある製品を探す
工場だけでなく、倉庫、実験室、清掃用具置き場なども確認します。
現場でしか使われていないスプレーや洗浄剤が見つかることもあります。
2.最新のSDSを集める
メーカーや販売会社からSDSを入手します。
古いSDSしかない場合は、新しくなっていないか確認しましょう。
3.実際の作業を見る
どこで、誰が、どのくらい使っているのかを確認します。
換気されているか、目や手に付く可能性がないかも調べます。
4.事故を防ぐ方法を考える
危険の少ない製品に変えられないか、使う量を減らせないかを考えます。
必要に応じて、換気設備や保護具も使います。
5.働く人に伝える
対策を決めても、実際に作業する人が知らなければ事故は防げません。
「保護メガネを着けてください」と伝えるだけではなく、理由も説明しましょう。
この洗浄剤が目に入ると、目を傷めるおそれがあります。そのため、作業中は保護メガネを着けてください。
「何をするのか」だけでなく、「なぜ必要なのか」まで伝えることが大切です。
理由が分かれば、安全ルールも守ってもらいやすくなります。
まとめ
2026年4月、リスクアセスメントが必要な化学物質は、約2,900物質まで増えました。
会社の担当者は、まず職場で使っている製品を探し、最新のSDSを集めます。
そのうえで、実際の作業を見ながら危険を探し、事故を防ぐ方法を考えます。
リスクアセスメントは、書類を作るためのものではありません。
そこで働く人の体と命を守るための取り組みです。

