「大学の次って、社会に出るだけじゃないの?」
実は、大学(学部)を卒業したあとに 大学院 という“次の学びの段階”に進む道があります。化学系だと、この進路を選ぶ人がけっこう多いです。
でも、大学院って何をする場所なのか、どれくらい年数がかかるのか、就職はどうなるのか…知らないと不安になりますよね。
この記事では、化学系の学部卒業後をイメージしながら、大学院の基本をやさしく説明します。専門用語はなるべく噛み砕きます。
この記事のポイント
- 大学院は「大学の続き」というより、研究が中心になる学びの段階で、修士(2年)・博士(多くは3年)がある。
- 化学系では研究開発を目指すなら進学で選択肢が広がりやすい一方、時間・お金・研究との相性といった負担もある。
- 進学か就職かは「やりたい仕事」と「研究を続けたいか」で決め、迷ったら先輩の院生活を聞くのが早い。
そもそも大学院って何?
大学院は一言で言うと、研究を深くやる場所です。
大学(学部)は、化学を広く学びます。
有機・無機・物理化学・分析などを一通り学んで、最後に卒業研究(卒研)をしますよね。
大学院は、その卒研をもっと本格的にしたような場所です。
「授業をたくさん受ける」というより、研究室で研究する時間が増えるのが特徴です。
まず言葉を整理しよう(ここが混乱ポイント)
大学院に関係する言葉は、最初に整理すると一気に分かりやすくなります。
- 学部(大学):通常4年。最後に卒研がある。
- 大学院:学部のあとに進む。研究が中心。
- 修士課程:多くの場合2年。修了すると「修士」。
- 博士課程:多くの場合3年(合計で修士2年+博士3年のイメージ)。修了すると「博士」。
年次の呼び方も独特です。
- M1:修士1年
- M2:修士2年
- D1:博士1年(博士課程1年)
「院生」は大学院生のことです。
年数と進み方の全体像(まずここを押さえる)
化学系でよくある進み方はこうです。
- 学部4年(卒研まで)
- 修士2年(M1、M2)
- 博士3年(D1〜D3)
この中で「どこで就職するか」が分かれ道です。
- 学部卒で就職する人もいる
- 修士まで行って就職する人も多い
- 博士まで行く人もいる(数は少なめになりやすい)
どれが正解というより、やりたい仕事と研究との相性で決まります。
大学院に行くと、生活はどう変わる?
学部と大学院の一番の違いは、時間の使い方です。
学部:授業が中心で、研究は最後に大きくなる
学部は1〜3年は授業がメイン。
4年で卒研が中心になります。
大学院:研究が中心で、授業は少なめ
大学院は、授業がゼロではありませんが、学部より減ることが多いです。
その代わり、研究室で研究する時間が圧倒的に増えます。
イメージとしては、
学部=「学ぶ時間が多い」
院=「研究して前に進める時間が多い」
です。
大学院で「何をする」の?(化学系の中身)
「研究って言われても、結局なにをするの?」
ここが一番気になりますよね。
大学院でやることは、ざっくり言えば、
テーマを持って、実験や測定を繰り返して、データで結論を作る
です。卒研と似ています。でも、次の点でレベルが上がります。
研究のレベルが上がるポイント
- 自分で計画する割合が増える
「先生に言われた通りにやる」より、「次はこうしよう」と自分で決める場面が増えます。 - 説明の説得力がより大事になる
ただ結果が出た、ではなく「なぜそう言えるか」を示す必要があります。 - 再現性が強く求められる
たまたま1回うまくいった、ではなく「同じ条件で同じ結果が出るか」を確かめます。
授業・ゼミ・輪講はどれくらいある?
大学院でも授業はあります。
内容は大学や研究科で違いますが、例えばこんなものがあります。
- 研究に近い専門科目(材料、触媒、計測など)
- 論文を読む・書くための英語
- 統計やデータ解析の基礎
- 研究倫理や安全の講義
そして、研究室内では次のような活動があります。
- ゼミ:自分の研究の進み具合を報告する
- 輪講:論文を読んで内容を説明する
- 進捗報告:短い頻度で「今こうです」を共有する
院生になると、外部の人に向けて発表する機会も増えやすいです。
例えば、学会発表(研究の発表会)などです。
研究室での立ち位置が変わる(後輩ができる)
大学院生になると、研究だけでなく「研究室の一員」としての役割が増えます。
- 学部生の相談に乗る
- 実験のコツを教える
- 装置の使い方を伝える
- 研究室の安全ルールを守らせる
- 場合によっては装置管理や在庫管理も関わる
ここで、意外と大事な力が育ちます。
それは 人に説明する力 と 段取り力 です。
社会に出たときにそのまま役に立ちます。
進路はどう変わる?(就職・博士・その他)
「院に行ったら就職は有利になる?」
これは一言では言えませんが、化学系では次の傾向があります。
修士で就職する人が多い理由(化学系の現実)
化学系の研究開発職は、企業側が「研究経験」を重視することが多いです。
だから、学部卒よりも修士卒のほうが研究経験が厚くなり、研究開発に入りやすい傾向があります。
ただし、これは「絶対」ではありません。
品質管理、分析、製造、安全など、学部卒でも活躍できる領域もたくさんあります。
博士まで行く人はどんなタイプ?
博士まで進む人は、ざっくり言えばこういうタイプが多いです。
- 研究が好きで、もっと深くやりたい
- 特定の専門で勝負したい
- 研究者として仕事をしたい
博士=大学の先生だけ、というイメージがありますが、企業の研究職に進む人もいます。
ただし博士は、進学のメリットとリスクが大きくなるので、しっかり考えて選ぶのが大事です。
大学院以外の道もある
もちろん、大学院に行かない道も普通にあります。
- 学部卒で就職(メーカー、分析、品質、安全など)
- 進路変更(情報系、教育系など)
- 公務員や教職など
「院に行かないとダメ」では全くありません。
大学院に進学するメリット(化学系目線)
大学院に行くメリットは、化学系だとわりとハッキリしています。
専門性が上がる
研究室で2年(修士)やると、特定のテーマでかなり深く経験します。
「この測定なら任せて」「この装置なら使える」という強みができます。
研究の進め方が身につく
社会に出て強いのは、知識量よりも
- 問題を分解する
- データで判断する
- 改善を回す
こういう力です。大学院はこの訓練になります。
研究開発志望なら選択肢が増えやすい
研究開発を目指す場合、修士のほうが選べる企業や職種が増えやすい傾向があります。
人脈が増える
研究室、共同研究、学会などで、同世代や先輩、外部の研究者とつながりができます。
これは意外と後で効きます。
大学院に進学するデメリット・注意点
いいことばかりではありません。ここも正直に押さえておくと安心です。
時間とお金がかかる
学費がかかりますし、2年間働けない分の「機会」もあります。
(ただし、奨学金やTA/RAなど支援がある場合もあります。)
研究が合わないとつらい
研究は不確実です。
テーマや研究室の雰囲気が合わないと、精神的にしんどくなることもあります。
だから研究室選びはかなり重要です。
「院に行けば安泰」ではない
進学する目的があいまいだと、「なんとなく行ったけどつらい」になりがちです。
院は“逃げ場”ではなく、“目的を実現するための選択”にしたほうが強いです。
進学か就職か、どうやって決める?
迷ったら、まず「やりたい仕事」から逆算するのが一番です。
大学院進学が向きやすい人
- 研究が楽しい、もう少し深くやりたい
- 研究開発職に興味がある
- 専門で武器を作りたい
- まだ学部の自分では自信がない(研究経験を積みたい)
学部卒就職が向きやすい人
- 早く働きたい、現場で学びたい
- 研究よりも実務(品質・分析・製造・安全など)に興味がある
- 進学の費用負担が重い
- 研究がどうしても苦手で、別の方向が合いそう
迷ったときにやるべき3つ
- 研究室の先輩に「院の生活」を聞く(リアルが一番早い)
- 志望業界の求人を見て、学部・修士の割合をざっくり知る
- 自分がやりたい仕事を言葉にする(研究開発?品質?分析?安全?)
大学院に行くには何が必要?(超入門)
大学院に入るには、多くの場合「入試」があります。
大学によって違いますが、よくあるのは次の形です。
- 英語
- 専門科目(化学の基礎)
- 面接(研究内容や志望理由など)
内部進学(同じ大学の学部からそのまま院)だと、ややスムーズな場合もあります。
外部受験(別の大学の院を受ける)ももちろん可能です。
学部のうちにやっておくと強いのは、派手なことより次のような地味な準備です。
- 基礎科目の穴を作らない(特に物化・有機・分析)
- 英語に慣れる(論文の要旨が読める程度でOK)
- 卒研で、ノート・報連相・再現性を意識する
よくある質問(FAQ)
Q. 大学院は頭が良い人だけのもの?
そんなことはありません。
大事なのは「研究を続けられるか」「目的があるか」です。
完璧な天才である必要はないです。
Q. 研究が苦手でも進学できる?
進学はできます。
ただ、研究が中心なので、苦手のまま入るとしんどくなりやすいです。
「何が苦手なのか(計画?実験?発表?)」を整理して、対策できるなら進学も選択肢になります。
Q. 院に行くと就職は遅れるの?
最低でも2年遅れます。
ただ、その2年で専門性や研究経験が増えるので、狙える職種が変わることがあります。
「遅れる」だけではなく「変わる」と捉えるほうが現実に近いです。
Q. 学費や生活費が心配…
奨学金などの制度があります。
ここは大学や個人で条件が違うので、進学を考えたら早めに情報を集めるのが安心です。
まとめ:大学院は「研究の比重が大きい次のステージ」
大学院は、大学の続きではありますが、研究の比重が大きくなるステージです。
化学系だと、研究開発を目指す人にとってはメリットが大きいことが多い一方で、
時間やお金、研究との相性といった注意点もあります。
大事なのは、「みんなが行くから」ではなく、
自分がどんな仕事をしたいか、そして 研究をもう少し続けたいかで決めることです。
もしまだ迷っているなら、まずは「研究室の先輩に聞く」。これが一番早くて、現実が見えます。
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