「修士ってなに?大学の続き?」
「大学4年の卒研(卒業研究)と何が違うの?」
「修士に行くと就職に有利って本当?」
中高生だと、大学院そのものがピンと来ない人も多いと思います。
なので最初に結論から言います。
修士課程は、研究を“仕事みたいに回せる人”になるための2年間です。
化学系だと、研究開発に進みたい人ほど、修士に進む人が多くなりやすいのも特徴です。
この記事では、修士課程がどんな2年間なのかを、年次(M1/M2)の流れ、
研究室での生活、何が身につくか、就職、メリット・デメリットまで、できるだけ易しい言葉で説明します。
この記事のポイント
- 修士課程は2年間で、卒研より本格的に「調べる→計画→実験→解析→改善→発表」を回し、研究を“仕事みたいに進められる力”を身につける。
- 生活は授業より研究が中心になり、ゼミ・輪講・学会発表・修論が増えるため忙しくなるが、その分「原因究明」と「説明力」が鍛えられる。
- 研究開発などでは就職の選択肢が広がりやすい一方、時間と費用の負担もあるので「やりたい仕事」と「研究が合うか」で進学を判断する。
修士課程を一言でいうと何?
修士課程は、大学院の前半2年間のことです。
「学部の卒研の続き」と言えば近いのですが、正確にはこうです。
卒研=研究の入門
修士=研究を回せるようになる訓練
卒研では、先生や先輩に教わりながら「研究ってこうやるんだ」を体験します。
修士では、その経験を使って、自分で計画を立てて、実験して、データを集めて、改善して、発表まで持っていく場面が増えます。
なので修士に入ると、授業よりも研究室で過ごす時間がぐっと増えます。
まず全体像:修士2年間はこう進む(M1→M2)
修士課程は2年です。
修士1年をM1、修士2年をM2と呼びます。
大学や研究室で違いはありますが、流れはだいたい共通です。
M1前半:立ち上げ期(基礎固め+手法習得)
最初は「準備」が多いです。
- テーマの背景を理解する
- 先行研究(これまで何が分かっているか)を調べる
- 実験手順や装置の使い方を覚える
- まずは“同じ結果を出せる”状態にする
ここは地味ですが超重要です。
ここを雑にすると、後半ずっと苦しくなります。
M1後半:研究が回り始める(実験量が増える)
手法に慣れてくると、研究が「回る」ようになります。
研究が回るとは、簡単に言うと、
仮説を立てる → 実験する → 測る → 考える → 次の実験を決める
このセットが、自分の中で回転し始めることです。
この時期は実験量が増えます。
「失敗したら終わり」ではなく、失敗から原因を切り分けて改善する回数が増えます。
M2前半:成果をまとめる(学会が見えてくる)
研究が進むと、外に向けて発表する機会が出てきます。
- 学会発表(研究の発表会)
- 研究室内の中間発表
- 共同研究先への説明
ここで大事になるのが「伝え方」です。
自分の研究を、知らない人にも分かるように説明する練習になります。
M2後半:修論・最終発表+就職(忙しさMAX)
修士2年の後半は、修士論文(修論)と最終発表の季節です。
さらに多くの人は就職活動も並行します。
この時期は忙しいです。
ただ、忙しさの中で「優先順位をつけて動く力」が一気に伸びます。
これは社会に出てからも役に立ちます。
修士の1週間はどんな感じ?(生活のリアル)
中高生のイメージだと、大学は授業がたくさんあって自由時間も多そうですよね。
修士は、そのイメージから少し変わります。
研究が中心で「出勤」みたいなリズムになる
修士は研究室が“生活の中心”になります。
平日は研究室に行く日が多く、研究室によっては「コアタイム(この時間は基本いる)」がある場合もあります。
ただし「ずっと実験」ではありません。
- 実験している時間
- 測定の待ち時間(装置待ち、反応待ち)
- データ整理・解析の時間
- 文献を読む時間
- 発表スライドや資料作りの時間
こういう作業が混ざります。
授業・ゼミ・輪講はどれくらい?
修士でも授業はありますが、学部より少ないことが多いです。
その代わり、研究室のゼミが大事になります。
- ゼミ:研究の進捗報告
- 輪講:論文を読んで説明する
- ミーティング:相談や計画の確認
ここで鍛えられるのは「説明力」と「相談力」です。
忙しさが増える理由は3つ
修士が忙しく感じる理由は、大体この3つにまとまります。
1つ目:実験が長い(条件を変えて何回も回す)
2つ目:装置待ちや予定ズレが起きる(研究は予定通りにいかない)
3つ目:締切が多い(学会、報告、修論、就活)
ただし、忙しさが「ずっと苦しい」かどうかは研究室によります。
雰囲気や指導スタイルでかなり違うので、進学を考えるなら先輩に聞くのが早いです。
修士研究って具体的に何をするの?(化学系の中身)
修士研究は、分野によって見た目が違います。
でも、作業の中身は意外と共通しています。
研究テーマ例(雰囲気だけ)
- 有機合成:新しい分子を作る、反応条件を最適化する
- 触媒・無機:触媒や錯体を作って性能を評価する
- 材料・高分子:材料を作って物性を測る(強度、電気特性など)
- 分析・計測:測り方を改善する、精度を上げる、妨害を減らす
- 電気化学:電池や電極、反応を電気の視点で見る
- 生命・バイオ:タンパク質や酵素、細胞系の手法で調べる
研究作業はこの5つに分解できる
研究は難しく見えますが、やることを分解するとこうです。
- 調べる(先行研究、基本原理)
- 計画する(何を変えて、何を比べるか)
- 実験・測定する(データを作る)
- 解析する(グラフ、比較、統計)
- 改善する(次の手を決めて回す)
このサイクルを、何十回も回します。
研究で一番大事な考え方
修士で大事なのは「頭の良さ」よりも、研究の進め方のコツです。
- 失敗はデータ(失敗から分かることがある)
- 原因を切り分ける(操作、試薬、装置、条件)
- 一度にたくさん変えない(原因が分からなくなる)
この3つができると、研究は前に進みます。
修士で求められるレベルはどこが上がる?
卒研と修士の違いは、ざっくり言うと「丁寧さ」と「説得力」です。
データの質:再現性が大事
卒研では「1回うまくいった」で終わることもあります。
修士では、同じ条件で繰り返して同じ傾向が出るかを見ます。
- 何回測ったか
- バラつきはどれくらいか
- 他の条件と比べてどうか
こういう見方が増えます。
説明力:なぜその結論?を図で示す
修士では「結論」より「根拠」が大事になります。
なので、口で説明するより、図やグラフで見せる力が伸びます。
自走力:相談しつつ、自分で回す
修士になると、先生に相談するのは大事ですが、毎回指示を待つのではなく、
「今こういう結果で、原因候補はこれ。次はこの実験をしたい」
という形で話せると強いです。
これができると、研究が一気に速くなります。
修士論文(修論)と学会発表って何?
修論は「2年間の研究の成績表」
修士を修了するために、修士論文を提出します。
内容は「2年間でやった研究を、文章と図でまとめたもの」です。
形はほぼ決まっています。
背景 → 目的 → 方法 → 結果 → 考察 → 結論 → 今後の課題
中高生の自由研究を超本格化させた版、と思うと近いです。
学会発表は“外の人に通じるか”チェック
学会は、研究者や企業の人も集まる発表会です。
ここで質問を受けると、「自分の研究の弱点」が見えます。
- なぜその条件?
- 比較対象は?
- 再現性は?
- 他の方法では?
質問が怖いと感じる人も多いですが、実は成長のチャンスです。
外の視点が入ると、研究が急に良くなることがあります。
成果が出なかったらどうなる?
研究は不確実です。
なので、成果が想定より出ないこともあります。
でも、修士の評価は「結果だけ」ではありません。
目的や方法が妥当で、データ整理ができていて、考察が筋道立っていれば評価されます。
もちろん何も出ないのは苦しいですが、「どう進めたか」が重要です。
就職はどう変わる?(化学系の修士が強い場面)
化学系で修士が強く働きやすいのは、研究開発や分析など「研究経験がそのまま仕事に近い」領域です。
修士が活きやすい職種(例)
- 研究開発(新材料、触媒、製品開発など)
- 材料開発・プロセス開発
- 分析・評価(機器分析、品質評価など)
- 技術職(技術営業、技術サポートなど)
- 品質・安全に関わる技術領域
ただし、学部卒でも強い職種もあります。
製造、品質管理、分析、保全、安全など、現場で育つ領域も多いです。
面接で見られるポイント
面接で見られやすいのは「研究内容が難しいか」ではなく、
どう考えて、どう進めて、どう改善したか
です。
- うまくいかなかった時にどうした?
- 何を根拠に次の実験を決めた?
- データをどう整理した?
- 誰にどう説明した?
修士は、この話が厚くなりやすいので、面接で語れる材料が増えます。
お金の話:学費・生活費・支援(超入門)
修士に進むと、当然お金の話が出てきます。
ここは家庭事情によって大きく違うので、考え方だけ押さえておきます。
学費はかかる
大学院でも学費はかかります。国立・公立・私立で差があります。
また、研究室生活では、学会や研究に関わる費用が発生する場合もあります
(大学や研究室の支援があることも多いです)。
奨学金や支援制度がある
多くの人が使うのが奨学金です。
また、研究室によってはTA/RAという制度があります。
- TA:授業のサポート(採点補助、実験補助など)
- RA:研究の仕事として手当をもらう(研究プロジェクト支援)
イメージとしては「研究室の仕事を手伝ってお金が出ることもある」くらいでOKです。
バイトの現実
修士でアルバイトをしている人もいます。
でも、研究が忙しい時期(学会前、修論前)はかなり厳しくなります。
なので、バイト前提で考えるなら、時間の見積もりが大事です。
修士に進学するメリット・デメリット(修士に絞って)
メリット
- 研究経験が厚くなる(自分で回した経験が増える)
- 専門性が上がる(装置や分野の武器ができる)
- 発表経験が増える(説明力が伸びる)
- 研究開発志望なら選択肢が増えやすい
- 問題解決の力が実践で身につく
デメリット
- 2年分の時間がかかる
- 学費や生活費の負担がある
- 研究は予定通りにいかない(ストレスがある)
- 研究室との相性が悪いとつらい
- 就活と修論が重なる時期が忙しい
修士は「行けば得」ではなく、「目的が合えば強い選択」です。
向いている人・向いていない人(でも対策できる)
向いている人
- コツコツ改善できる
- 原因究明が好き
- データを整理するのが苦じゃない
- 人に説明して理解してもらうのが好き(または伸ばしたい)
つまずきやすいポイントと対策
英語が不安
→ いきなり論文全部ではなく、要旨や図表から慣れる。頻出単語をメモして積み上げる。
発表が怖い
→ いきなり上手くならない。結論→根拠→比較、の順で話す練習をする。スライドは文字より図。
研究が詰まってメンタルが落ちる
→ “詰まり”を分解する。操作なのか、試薬なのか、装置なのか、条件なのか。
相談の時は「仮説と次案」を持っていく。
修士は、才能よりも「続け方」が大事です。
修士課程に行くには何が必要?(入試の超入門)
大学院入試は大学によって違いますが、よくあるのは
- 英語
- 専門科目
- 面接
です。
内部進学(同じ大学の学部からそのまま院)は情報が集めやすく、外部受験(別の大学院を受ける)も可能です。
学部のうちにやっておくと強いのは、基礎科目の穴を作らないことと、英語に慣れておくことです。
よくある質問(FAQ)
修士は毎日研究室?休みはある?
研究室によります。
休みがしっかり取れるところもあれば、忙しい時期は長くなるところもあります。
共通して言えるのは、学部より研究の比重が高くなることです。
研究が失敗続きでも修了できる?
研究は失敗が前提です。
評価されるのは「どう進めたか」「データをどう整理し、どう説明したか」も大きいです。
就活と修論は両立できる?
できます。ただ、計画が重要です。
研究室の先輩の体験談を聞くのが一番現実的です。
女子でも大丈夫?
もちろん大丈夫です。
化学系は女性も多い分野ですし、安全や設備の整備も進んでいます。
研究室の雰囲気は見学で確認できます。
まとめ:修士課程は「研究を回せる人になる2年間」
修士課程は、ただ大学を長く続ける場所ではありません。
卒研で学んだことを土台にして、
自分で計画し、実験し、データで判断し、発表まで持っていく
この力を身につける2年間です。
研究開発に進みたい人にとっては、修士はかなり相性がいい道になりやすいです。
一方で、時間や費用、研究との相性というデメリットもあります。
だからこそ、「自分がどんな仕事をしたいか」「研究をもう少し続けたいか」で判断すると失敗しにくいです。
ばけがく!で高校化学を“アニメで”サクッと復習しよう
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